30歳過ぎると一気にお見合いの紹介の話が来なくなる。そんな話を聞いていたけれど、
本当にその通り。でも、まだその時は「どうにかなるさ、なんとかなるさ」と思いが
どこかにあった。
 だってそうでしょう、私はまだまだおしゃれにだって気を使い、スタイルだって20代
と同じ服が切れるように努力していた。

 ある日突然、お見合いの話が舞い込んできた。久しぶりだなと思っていたら、お相手は
何度か婚姻歴があった方。でも、それなりの収入はあり、子どももいないため、今度こそ
結婚したら子どもを作って、円満な家族にしたいと言っているそうだ。いきなり、
お見合い物件の質が変わってきたので、びっくりしていたら隣りから母が
「もう、あなたの歳に合う方で結婚していないっていう男の人は、婚姻歴がある方が
多いのよ。」
ときつい口調で言ってきた。

 確かにもうすぐ35歳。世の人からはアラフォーと呼ばれる年齢になる。どうにか、
医療技術の向上のおかげで、子どもは一人くらい産めるだろうとたかをくくっていた矢先
の出来事だった。親からしてみたら、「結婚したくないのかしら…。」なんて思われている
かもしれないけれど、私だって結婚したいし、子どもも欲しい。

 でも、なかなか出会いがなくて、夢や希望はあっても、リア充は難しい。そんな時に
私はいつもカッコいいボーカルのバンドの曲をヘッドホン越しに聴く。あぁ…癒される、
私の傷口を優しく守ってくれるような歌声。現実逃避をしながらも、さっき見た
お見合いの写真を見てみる。視界にはお見合い相手の顔、そして耳からはとろける様な
甘い声。もう、まるでそのお見合い相手の方がこの声の持ち主なのかと錯覚してくる私。
心をいやしてくれるこの音楽がある限り、母からの攻撃をうまくかわせるだろう、
と思いつつ、落ち着いた心になったところで、母に声をかけてみようかな。

「ねぇ、この人の声が聞きたいから、お見合いしてみようかな!」って。