ミネラルショーへ行く
この世で好きなものの5本の指に入るものに、鉱物がある。
私は子供の頃から宝石や石が好きで、宝石店の広告を大事に取っておくようなもの欲しそうな子供時代を過ごした。
大人になるにつれて、宝石としてカッティング加工されてしまった後の石よりも、段々原石、すなわち鉱物のほうが好きになった。
鉱物には色々ある。
磨けば宝石になるようなまさに原石や、生物が石に変わった化石や琥珀の類、色々な鉱石が集まった岩石など。
どれも魅力的で、一日眺めていても飽きない。
そんな鉱物が一挙に集まるのがミネラルショーである。
宝石から化石まで、ありとあらゆる石を展示即売会で購入できる。
世界中から集まった鉱石商が、自慢の品々を置いているミネラルショーは、とっても見ごたえがある。
見ごたえがある分、入場料を取られるので、冷やかしでいくにはちと高くつくので要注意だ。
毎年、とはいかないが、都合がつく年には足を運んでいる。
100店を優に超すブースが集合しているので、じっくり見たら一日では見切れない程。
しかも、本気の売買をしているので、てんで素人の私なんかちっとも相手にしてもらえない。
それでも、一年にほんの一、二回、世界中の石たちを好きなだけ眺められるというのは本当に嬉しい機会なのである。
一度、ブラジルの宝石商のおじさんが声をかけてくれ、「何の石が一番好きなの?」と聞いてくれたことがあった。
こんな何にも分からない、マニアでもバイヤーでも何でもない私に声をかけてくれただけですごく嬉しくて、すっかり舞い上がってしまった。
でも、何の石が一番好きか答えられなかった私は、「まだ決めてない」と言うのが精一杯だった。
非常に馬鹿みたいな答えだ。
それ以来、もしもう一度あのおじさんが同じことを聞いてくれたとき、「オパールよ」と答えようと思っていつも意気込んで行くのだが、あれから一回も彼には会えずじまいである。
今年こそ会えると嬉しい。
また舞い上がって、「まだ決めてない」と言ってしまうかもしれないけれど。